イオン飲料を考える
イオン飲料は①経口補水液(ORS、OS-1)②小児イオン飲料③スポーツドリンクに大別されます。イオン飲料のルーツは治療に使う点滴です。
小腸から吸収された栄養はまず血管に入り、毛細血管を通じて全身の細胞の周囲に行き渡ります。これを運ぶのが体液です。
しかし栄養はまだ細胞の中まで入れません。ナトリウムがいてはじめて細胞の中に入ることができます。逆に老廃物は細胞の外へ出て、血液を通して体外へ排出されます。これが尿です。
下痢をすると水分だけでなく、ナトリウムなどの電解質も奪われます。体液が十分でなければ栄養も取れず、老廃物もでません。
(ナトリウムには他に体内の水分量や浸透圧を調整する働きがあります)
ブドウ糖と食塩を同時に摂ると小腸から約25倍のスピードで水分と栄養分給されることがわかり、経口補水液は約50年前に開発されました。これによりバングラディッシュではコレラの死亡率が30%から3.6%まで激減しました。
(ナトリウムイオンとブドウ糖が含まれてない水分を摂取してもほとんど体内には吸収されない)
ここでスポーツドリンクと経口補水液が混同されているので整理しましょう。
医療用の経口補水液のブドウ糖は2%です。この濃度だと水分・電解質・ブドウ糖がもっともスムーズに吸収されます。だから経口補水液のことを『飲む点滴』と言われています。この2%のブドウ糖の濃度が重要なのです。
この濃度が高くても低くても吸収速度は低下します。しかし、スポーツドリンクは砂糖が6%も入っています。(水で薄めるとナトリウムが薄まってしまいます)
ナトリウムにおいても、スポーツドリンクは経口補水液の約1/3となっています。
スポーツドリンクは電解質が意外と低いのです。
暑い環境でも通常の場合は真水や麦茶で十分ですが、激しい運動などでは十分な水や電解質の補給が必要なため経口補水液が適しています。
しかし、電解質にも欠点があります。糖分が少なく、美味しくないことです。
副院長 梅津幹也
2020年08月03日 08:30